Graffiti of Dental Technology


Vol.12:ポストの印象への石膏注入に注意! 

適合のよい鋳造支台築造を製作するための第1歩

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はじめに
 近年は支台築造のポスト形成はできる限り長く、またできる限り細いものが良いという傾向になってきています。これは支台築造の保持力を向上させるためであり、歯根破折を防止する意味があります。そこで印象材は高弾性で多少の根管内のアンダーカットに対しても撤去時の歪みが小さい重付加型シリコーン印象材を用いるケースが多くなってきました。しかし、高弾性を有する印象材であるが故に印象用ピンが用いられていない場合などは石膏注入時の外力で変形しやすいということを認識しておくべきでしょう。以下に簡単なテストにより石膏泥の流れる圧力によりポスト先端が変位する状態を示してみました。石膏注入時にポストの変形を最小限に抑制するために我々が注意し対応していることを簡単に紹介します。

 

石膏泥でポストは変形している!

 印象用ピンを用いていないポスト長約6mmの印象をサベヤーの模型台に約10度傾斜で固定します。左方向から注入した石膏泥にポストが抵抗できずポスト先端に変位が認められます。

 石膏泥の流れを止めた後もポストは復位することができず、石膏硬化後のポスト先端には約0.1mmの変位が認められました。不用意な石膏注入によりポストがこのように変形していることを認識していなければなりません。

 

 ポストの変形を最小限に抑制して石膏注入するには

(1)石膏注入時や注入後もポストをつねに垂直方向に保ち、ポストに 均等な重力がかかるようにします。

(2)つねに小さな振動下で、根管口周辺から少量ずつ石膏を注入し、 一方向から大量の石膏を流さないようにします。

(3)石膏の注入量はポストの先端から約5〜6mm程度とし、注入後 は専用台上で硬化を待ちます。また、石膏泥の形を整えようとス パチュラでなでつける操作も危険です。
(4)ほぼ同じ太さの複数のポストがある場合は、その傾きのおよそ平 均的方向に虫ピンを植立します。石膏泥の圧力が特定のポストに 偏らないための目安とします。また、複数のポストの中に細くて 長いポストがある場合は変形が懸念されるポストの方向を優先し て石膏注入するなどの配慮が必要です。

 

このような症例では2回法で!
 最後方歯のポストが遠心方向に大きく傾斜している症例。ポストの方向を考慮せずに大量の石膏を注入すれば変形は免れないと思われます。

 石膏注入前にサベヤーの模型台上で印象の固定角度を決定します。築造体部分のみ石膏注入して模型台に戻して硬化を待ちます。

 石膏注入を2度に分けてできあがった作業模型。築造体の模型であってもわずかな手間と工夫で精度の高い作業模型を製作することができます。

まとめ
 補綴装置の脱離や歯根破折などもなく長期にわたり良好な予後を保つためにも築造体が歯質に正確に適合し、高い保持力を有していることが重要です。そのためには製作者が作業模型に正確に適合した築造体を製作することが基本です。製作のためのスタートラインというべき作業模型が不良であればいくら適合していても口腔内での良好な適合を期待することはできません。適合精度の高い築造体を製作するためにはまず精度の高い作業模型を製作することから始まるということを念頭において石膏注入すべきでしょう。今回紹介した石膏注入法は日常の臨床にすぐにでも取り入れることができる簡単なものです。支台築造はクラウンなどの修復物で覆われるから多少ルーズでも大丈夫などという安易な考えは捨て、ポストを有する印象への石膏注入を慎重に行なうことをお勧めします。

参考文献
1)高瀬英世,福島俊士:支台築造の為の印象採得.歯界展望別冊/クラウンブリッジの印象採得.医歯薬出版,東京,74〜83,2002.
2)邑田歳幸,水野行博,坪田有史,高瀬英世、福島俊士:築造体製作の現在.QDT,27(10),19〜25,2002.
3)
邑田歳幸,水野行博,高瀬英世,福島俊士:1回鋳造法による分割支台築造の技工.QDT,28(5),15〜23,2003.

Presented by T.Murata(歯科技工研修科 邑田 歳幸)


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